九六の匣

さまざま詰めこんだ匣

九六式落語風 『馬霊玉』

九六式落語風 『馬霊玉(ましょうぎょく)』



 えー世に好き物は多くいらっしゃいますわなぁ

清次郎なる骨董に滅法こだわりを持つ男がいましてな
ある時、呑み友達の助六に
「あしゃあ、このかた世の珍品を集めてきた」と蒐集の自慢噺をしております。
「清さんの事だから 相当値の張る珍しいモノや噺があるんだろうね」
「まあ聴いてくれよ助さん、この間、旧家の蔵にあったモノだが…」
「なんだよ、勿体ぶるなよ。そんでその蔵から何が…」
「待て待て、誰が聞いてるやもしれねぇ。もっと寄りなさい」
「……」
「うげぇ、そりゃあ凄い」
「まだ言ってねぇよ」
「そうか早合点だったね」

「…蔵の奥からぁ…珍しい石がでてきたんだよ」
「石ーぃ、石がそんなに凄いのかい」
「そうだなぁ、その大きさは手毬の如く、丸くて、しかし重い」
「そりゃぁこんなもんだろう」と両手を回す仕草。

「その輝きは七色の虹が浮き出ていてね」
「それは舶来物なのかねぇ」
「それがよく聴いてみるとぉ、元々カミさんの実家にあったらしい」
「その奥方は金持ちなんだねぇ」
「いやいや、新宿村の農家の出だよ」
「ほぉ新宿村といぁ街道沿いの…そいで地面からでも掘り当てた。そうだろう?」
「まぁ似ても異なる処、ある時にぃ働きものの馬が死んだそうだ」
「ほう、う・馬ぁねぇ」
「可愛がっていたんで、食う訳にもいかねぇと馬頭観音よろしく簡素な棺桶をつくって塚に埋めた」
「俺なら馬刺しで一杯でぇ、勿体ない」
「おいおい、恨まれるよう」

「七日、つまり初七日、初午の日ぃ」
「馬にも初七日ってのがあるのかい」
「娘のおみよ坊が花を手向けに塚にいった…」
「良く聞く名前だねぇ、もしかすると馬の名はアオかい」
「その通りだが話の腰をおっちゃあいけねぇよ」
「娘が塚の場所が光輝いているのでぇ、腰ぬけた」
「おーそれでぇ」

塚によってひと掻き、ふた掻き
するってぃと土中から出たのがこの玉(ギョク)だという。

お和尚に知らせると、これは俗に世にいわれる『馬霊玉』ではないかと大騒ぎ。
拝み讃えて仏壇に供え、毎日念仏など唱えた…。

がぁ、通りかかった高齢の山伏が
「これなる玉は奇妙奇天烈、怪異怪変 魔性の玉 伝々とばかりに言ったそうでぇ」
「するとなにかい、その玉はタタリでもあるのかい」
「その通り、災いがあり、呪いがあるとね」
「けっ、しんじねぇよ。その山伏が妖しいね」
「そうはいうものの、なにか起こったらいけねぇと」
「一度拝見したいねぇその石玉、たまげるほどかい」
「まぁ聴いちくれ、五色の布に包んでぇ桐の箱にいれ遠い縁者の蔵にしまいこんだぁ」
「ほう、やっと新宿から浅草にやってきた」

清次郎は なんとか譲って欲しいと頼んだが、子々孫々まで蔵表に出してはいけねぇと言われたが諦めきれない。一度だけなんとか拝ませて欲しいと懇願してやっとの事でみせてもらったが、なんとその石玉の美しさといったら、この世のものでない。七宝七光の虹が周りにのぼるってなもんだね。

なんとか手に入れたいと思案するが盗人はご法度、
そうか自分でつくりゃあいいのかと思いつきまして

早速、あの新宿村の農家に赴いて粘ること四十九日、馬に食わせた草とか飲み水、土までも調べ上げて帰りぎわ 目白の何がしで馬を買いまして意気揚々戻ります。

たまには助六が様子を見物に参りますが、馬と同じものを食べて試して研究熱心でございますなぁ。
やがて一年も過ぎて清次郎が助六を訪ねて参りまして、もうすぐできそうだ。後は馬が死んだら埋めるだけとのたまいます。

ところが、精も根もつかい果たした当の清次郎がポックリ逝っちまいましてねぇ。

助六も呆れるやら残念がるやら、惜しい呑み友達をなくしたと嘆く嘆く。
初七日になりまして、清次郎の墓前に訪れたところ
「なんだなぁ、清さんお馬は元気だよ、親はなくても仔馬はそだつ…
 おやぁ!ひかるものがあるよ
 おおー、小さいけれど、馬霊玉じゃなく人霊玉だ~。素晴らしい黄金色」

よくよくみると、
「うん!?  なんだぁ!ふたつもあるよ。ふたつぅ?黄金?」



馬霊玉の一席でございました。お後がよろしいようでぇ


  
ゆく春の いろ艶やかに 衣きて 酔いてみやるか ひとの襟足

うら若きおなごはえーですな   はしたないぞぇ


九六
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コメント

ふ、ふたつ?
わはははは・・・

  • 2012/04/04(水) 15:32:24 |
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  • 67号 #-
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