九六の匣

さまざま詰めこんだ匣

【歩句】『三猿/不見、不聞、不言、不動の四猿』1069

【歩句】『三猿/不見、不聞、不言、不動の四猿』1069


するなとて四猿のつたえ不断梅




三猿の事
三猿③--三猿②

庚申講は道教の教えで60年、60日都度に巡ってきます。
人の體躯の中に三尸虫(さんしちゅう)」という虫がいて庚申の夜に抜けだし天上いき 犯した罪を話しては寿命を罪で決めるという信仰。守庚申と言い見張りのため夜を眠むらずに過ごすという。庚申(こうしん、かのえさる)
参猿⑳

論語の孔子は礼に非ざれば視ること勿れ、礼に非ざれば聴くこと勿れ、礼に非ざれば言 うこと勿れ、礼に非ざれば動くこと勿れというのがあるそうです。まったく四猿という事でしょうか。

孔子廊の前に咲く不断梅は年中(?)咲いているそうな‥。


☆彡
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『笑九朗事件綴』漆

『笑九朗事件綴』
2009-1--2009-2--2009-3

2009-5--2009-6--2008-4

2009-7--2009-8--2009-9

『笑九朗事件綴』漆

2002-1--2002-2--2002-3

2002-4--2002-5--2008-3

2008-1--2008-2--2009-4

笑九朗はこの蔵の中に何物の侵入を許さない占有区、或はサンクチュアリ(聖域)的なものを覚えたが、この巨木を守護するというより得体の知れない何かを封印する為に多くの像が配置されているのかもしれないと感じはじめていた。
花は梅介の手を握り締め底知れない恐怖を堪えているようだ。

この樹の場所で過去に何かがあったのか、その怨念を鎮めるために囲いをしてあらゆる宗派の像を配置して この場所から外に影響をさせないために魔方陣のように置かれたのかもしれない。

恐怖という尊厳にも似たこの樹は三人を呑み込むように迫ってくるのだ。

笑九朗探偵日誌●蔵

花は巨樹のあまりにも剛圧なる気迫におされてたじろぎながら後退り逃げ出したかっただろう。梅介は前にも見ているのだろう、口をへの字に曲げ 年上の花の前に陣取り庇うよう拳で仁王立ちしている。花は梅介の腕を強く握りしめているようだ。

「梅介君はいつも この樹をみているんだろう」
「ほだあ、旦那さまと、へぇる(入る)時は全部さぁ黒幕が架かってるし、触っちゃなんねと、いつも言われてだがら。それに怖ぇから呼ばれるまで近づかないで ずっと手前さ突っ立っているのさ」
「すると 今みたいに巨大な羅漢様とかの像にも幕で隠されていたんだね」
「うん だどもこの蔵はいつ見ても気味が悪いだ」
花も頷く

「この樹は普通の生木とは違うようだけど、樹の化石と知ってたかい?」
「化石っていわれでもほだくてね(判らない)けど、二階さあがってみればすぐ判るぞ。樹は硬く伸びて 葉っぱ一枚もない尖った岩のようになってるべ」

「僕はこんな巨大な木化石を初めてみたよ」


木化石-部分


二階にあがるにはどうすればいいのだろうと辺りを見まわす。

「上に行くにはどうすればいいのかな お花さん」
花は指だけを木化石の奥を震える指で示した。

指の方向には、壁に沿って不思議な大きく高い引出しのついた箪笥がビッチリと隙間なく置かれている。
この辺で箪笥といえば仙台箪笥そし岩谷堂箪笥が有名であるが、この箪笥は形は違っているのだ。通称、薬箪笥といわれるような代物で引出しが小さな引出しが壁一面を覆ってあり、全部閉じてある。
傍により首をあげてみても馬鹿高い欅の箪笥というしかなく、普通の階段状に造られた薬箪笥を商家で見かけたことはあるが、これは立方体であり梯子らしきものはないようだ。

すると梅介が一番下にある引出しを引張りだした。中は物を入れる空間はなく四角い積木箱みたいなものが現れた。
大人ひとりが立てる巾である。梅介はその上に登ると、次に一段上の引出しを引っ張りだすと、それはあたかも階段の連続のようになった。これは箪笥に見せかけた機巧階段であった。暫くたつと狭く細長い階段が現れたのである。
「これは‥隠し階段なのか」
笑九朗はその仕掛にまたもや驚いてしまった。ここまで厳重に人を寄付けない建物は何かを隠しているということだ。


 笑九朗はあることに疑問をもちはじめていた。
それは何故、この屋の主は子供だけを伴ってきたのだろう。
梅介とお花は次々と引き出しては登りはじめたが二階にはそれほど重要なものが置かれてあるのだろうか。
笑九朗は箪笥の壁に寄り添いながら、彼らの後を危なげについて行くしかなかった。


梅介は階段を折返して、やがて天井に行きあたる。
「探偵さん落ちるんでぇねえど」
「有難う、ここは高くて危険な階段ですね まったく高い処は苦手だよ」

と節穴のような処に手を入れた。
またなんか仕掛けがあるのだろうか、梅介は手首をモゾモゾさせていたが
「花!代わってくれぇ なんかへんただ(おかしい)ぞ」
狭い階段の上で入れ替わった。

暫く挑戦してたが、花が素っ頓狂な声をあげた。
「なにか上さいるんでねのが 廻らないべ」
泣きそうな声で 私を向くと
「探偵さん上さ来てけろ 早ぐ」

笑九朗は落ちないように箪笥の引手を掴み、ふたりと入れ替わった。
よく見ると天井の部分が小さな円形状になっていて、木目の節穴に手首を入れて中の弾み車を回すと、円形部分が回転するようになっているのだと梅介は語った。
笑九朗は窮屈な節に手をいれ力をいれてグイと押した。
軋むような音がしたかとおもったとたん天井が動き出したのだ。
一瞬、天井が崩れたのかとおもうほどの金きり音発したのである。

天井の動いた部分は、箪笥上部の隠れた部分であり緩やかに回転した。
「またカラクリなのか」

「あっ!!!」
笑九朗は溜息をつき 気を抜いたとたん、空中にほおりだされた。




つづく


御蔵6-20②-1---蔵の天井①2009-5-6




☆彡

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【歩句】『ニッキ飴』1063-1066

【歩句】『ニッキ飴』1063-1066

自転車漕ぎて頬張る肉桂飴    1063

ニッキ飴頬張り駆けろ自転車   1064

土手蒼く空をみあげてニッキ飴  1065 

ひりひりと肉桂香ばし夏の空    1066

※ シナモン(肉桂/桂皮/ニッケ/ニッキ/カシア)
楠くすのき 樟脳 セイロンニッケイ 

※ 過去の句栞
『歩句】『秋/あめだま』 705
ニッキ飴 転がり辛し 秋の穹
【歩句】『春/自転車』055        
自転車でニッキの飴と春の風
【歩句】『初夏/ニッキ飴』000-0
夏まじか 口の中には ニッキ飴

※ ニッキの事  検索より抜粋
【●】利用の歴史 シナモン(カシア)は紀元前4000年頃からエジプトでミイラの防腐剤として使われた。
【●】儀礼にも頻繁に使われていたようです。日本には8世紀前半に伝来しています。
【●】厳密にはシナモンと呼べるのはスリランカ産だけです。
【●】ニッキ油
【●】肉桂は細根は駄菓子とされる。
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【歩句】『闇の雨』1275

【歩句】『闇の雨』1275

雪こえて雨音聴こゆ闇の春


2010-3-15
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【歩句】『二季草』1062

【歩句】『二季草』1062

さすらいて何処に至る二季草

※陰陽五行説の春は青色で夏は朱色だそうです。
藤の紫色は二つの季節の混じったものと知りました。

【歩句】『二季草』1062----藤③2009-5-12


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『不思議な橋』

『不思議な橋』

ふれあい橋/監獄橋/見返り橋①

淺川マキだったろうか
ふぅしぎなぁはぁしぃがぁー このまぁちにぃあぁるう
ってな謡があったと憶う。
記憶の狭間に気だるく彼女は唸っていた。

かもめぇも好きだったが
この謡には 何故か想いれがある。

私の棲むあたりにも この謡と同様の橋があります
当初は「見返り橋」とか「監獄橋」といっておりました。
鉄道の複線の上に架かるこの橋の先には刑務所があり
当時は薄暗く狭い短いものでした。

子供の頃といっても14~15歳あたりかなぁ
寂しいこの橋は夜汽車がよく似合っていて散歩がてらとか
学舎に通う度に毎日通らざるえなく
橋の先には監獄の赤煉瓦が連なっておりました。
この中は当然刑期を過す人たちがおり、
たまに逃亡したとかという噂がありました。
だから「監獄橋」。

刑期を終えてこの橋で立ち止まり
汽車の煙にまかれたかたもおられたでしょうね。
振返るとまた戻ることになるやもしれず
振返らずに駆け抜けた者もいたでしょうし
こんな処は嫌だと 振返った方もいたんでしょうね
だから「見返り橋」。

最近、暗いイメージを払拭しようと
新しい名前がつけられたときく。
「ふれあい橋」というらしいが定かではない

つい最近もここを通る度に感じるのですが
「見返り橋」という語呂が好きなんです。
父親と二人でならんで光輝く駅方面を観たり
逆に巌鷲山方面に向って
登り行く汽車は汽笛を鳴らし北へと駆ける。

土木設計屋であった父はポツリという。
この橋は俺がつくのさぁっと
複線工事の先頭をきって働いた父の遺作であった。
そして、この「見返り橋」は今は亡き父との想い出の場所だから‥

夜汽車は闇の坂道の中を煙を巻き上げて 
そして汽笛が尾を曳くように
今でも橋の下を走り抜けていくシーンが
頭に焼けついています。

記憶が定かではないので橋の名前も違うかもしれない
でも記憶の襞は確かにいまも刻み込まれているのです。

「見返り橋」九六





父の影駆けて越されぬ花の影  【歩句】『見返り橋』1061







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【歩句】『うろ-有漏-虚』

【歩句】『うろ-有漏-虚』

樹の虚や木霊の女神
笛を吹く


探偵106瘤





☆彡
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『はな日記  おしばな/花栞』

『はな日記  おしばな/花栞』

謡は世につれ などなど
様々な果つる命の儚さを綴ってみれば
日々徒然なる事柄を他愛無く書き列ねて
心の憂さも多少は はれるやもしれぬ

押花①2009-5-25 押花②2009-5-25


花の命は短くて‥
そうですね
ひとの他愛のない歓びも
水面の波紋はあまりにも苛酷すぎる
庭の大輪なる白牡丹も今は哀れなり

押花④2009-5-25 押花⑤2009-5-25

命短し恋せよ乙女‥
唇に紅をさしたるひとは
この春の花々を観る事ができませんでした
こよなく愛でた名も知らぬものに
季節のうつろう想いをかけた

押花③2009-5-25 押花⑥2009-5-25

あなたは云った
花泥棒は罪じゃない
いろんな人と語らい 
歓びの花を持たせ 愁いなる花を貰い
ひとり黙々と土を寄せ
雑草を毟り
愉しむことを常としていた

押花⑦2009-5-25 押花⑧2009-5-25

またどこかで逢える日を迎えるまで
同じように私も 花泥棒になりましょう
可憐な花を初めて押花にしてみる
それは 花栞‥
忘れた頃にヒョイと顔をみせ
思い出話しでもしてみよか
さて、花々の永遠なる夢の海に溺れてみましょうか‥

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【歩句】『ギンドロ』1058-1059

【歩句】『ギンドロ』1058-1059

銀泥や川にきよめて煌めゆく

風ぬるく五葉の寶みつけたり


ギンドロ ⑤+






【轍の小径】

ギンドロの木のもとで
縦笛太鼓をうちならし
謡い 踊り 跳びはね 
季節は時を越えて いかようにもかわる
イーダァの國にわたしは棲む
もしあなたが 望むなら
足袋(タービン)なる梟を さしむけよう
イーダァは時間の扉 向う側にあるのだから‥

2007/03/13 「イーダァの国物語/鼓舞」より

※ギンドロ/銀泥/はこやなぎ/ポプラ種/葉裏の白い毛

ギンドロ①--ギンドロ②



停車場の陽射し翳せばふるさとの降りたつホームただ稚児になる

乳房なる幹瘤さすりて樹々のもと待ちくたびれたと我に問う
乳房の樹++
すれちがうゆきかう顔は懐かしき居場所さがしの旅はおわりぬ 

荒(すさ)びたる寄宿舎ありし草原はネガの記憶やいまも写りて

路ゆきて聴こえる声は訛りなく誘い導くセキレイのあと

角ひとつ小首かしげて五の字町

石の間を柄杓カラカラ桶躍る草を毟(むし)りて詫びる手のつち

石を裂き桜は青く佇みて

かわ端のやなぎ揺らめき煙草くわえる

ギンドロの五葉ゆびさす瀬音かな

風こだち五臓六腑や辿りみち

身をまかせすべて知りたる痩せ土塀

【590】『ギンドロの郷-改-』より



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【歩句】『しろかき』1057

【歩句】『しろかき』1057-1058

代掻きの蒼穹映し畔のいろ

代かき①----


----------------代かき②








代掻きや真白き手拭い水映る

代かき③


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【歩句】『かたみわけ』1056

【歩句】『かたみわけ』1056

のこされし指貫ひとつあやめ立つ

指貫②

はな日記5-24③    はな日記5-24②






☆彡

のこされし指貫ひとつ春わすれ----【歩句】『指抜き』1045

指貫③

古たたみ指貫ポツリ影おとす------【歩句】『指抜き』1044

指貫①








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【駱駝博物誌】『はなの町』

【駱駝博物誌】『はなの町』

筑波山麓にこよなく自然を愛でる 駱駝氏は住んでおります。
彼の写真メールなどを今回から掲載いたします。

第一弾は、土浦の旅日誌寫樂版を公開。
『蓮』
W蓮花-れんげ-①--

W蓮花-れんげ-②

W蓮花-れんげ-③--

W蓮花-れんげ-④


駱駝氏 から下記の書込みをいただきました

蓮華とれんげ草は違うようで、それぞれ正解のようです。
レンゲでどちらを連想するかですね。
蓮華の花も綺麗だけれど、れんげ草の花も可憐です。駱駝氏








駱駝さん有難うございます。写真をお借りいたしました。
今後も隠れコメントでかまいませんので をよろしくお願いいたします。
そのうち外国渡航の写真もよろしくね。

【歩句】『蓮の花』1055

ひと睡り極楽浄土や垣間見る蓮に座りて何を語らん


※俳句ではハスの花は蓮花(レンゲ)ともいい夏の季語ですが、一般に呼ばれるレンゲ草もいいもんですよね、たから普通は蓮、蓮の華(花)と言うのがいいかもしれません。

そういえば、以前書いたのですが、蓮の特性をいかした象鼻酒(碧筒酒)という酒の呑み方がありましたね。一度味わってみたいものです。 九六


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【歩句】『W氏』1054

【歩句】『W氏』1054

定年の秘めたるメール綿毛とぶ

たんぽぽ⑥綿毛

メールをいただく。
おめでとうございます、ご苦労さまでした。
蒲公英の綿毛のように気侭に生きるのだろうか
花はまた咲くために種をとばす
暫し 体力を補って
また根をはり 花をひらく
また逢おうよ

七七の日




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【歩句】『撓わに-たわわに--』1051-1053

【歩句】『撓わに-たわわに--』1051-1053

五月雨やシダレカツラのかごめ唄

カツラ垂れ翠雨つたいてたわわなり

枝垂れ①---枝垂れ③2009-5-6


山裾の撓わにさがる緑葉に暫し駆け込む我は佇み

枝垂れ鬘②
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【歩句】『刻む』1050

【歩句】『刻む』1050

われさきに毀れて春の色刻む


芝櫻①赤2009-5-12 芝櫻②白2009-5-12
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【歩句】『ひとり』1049

【歩句】『ひとり』1049

もの言わぬ花は佇みひとり影


★①2009-5-12


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【歩句】『大輪』1048

【歩句】『大輪』1048

雫浴びかしら傾(かし)げし白牡丹

大輪のはな③-白牡丹2009-5-11 大輪のはな①-白牡丹2009-5-11

大輪のはな②-白牡丹2009-5-11
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『はな日記 千紫万紅』

『はな日記 千紫万紅』

◎鉢のなか①2009-5-6  ◎切株⑬2009-5-8

◎斑① プラタナス2009-5-8  ◎木 枝垂れ2009-5-6

◎蕾①2009-5-6あやめ 菖蒲  ◎石南花蕾 牡丹①2009-5-6芍薬

黄色い花①ネモフィラ  黄色い花②2009-5-6 柊

黄色い花と蜂④2009-5-5ペチュア---黄色い花③2009-5-6

紅い実①2009-5-6  紅い実②2009-5-6

紫 ロベリア-淡青色-るりちょうちょう-四弁花 5-6  紫と赤⑥ 椿の色二種2009-5-6

紫花①2009-5-8  紫花②2009-5-8

紫花③2009-5-8  紫花④2009-5-8  

紫花⑥2009-5-8  紫花⑤2009-5-8  

紫花⑦ 芍薬2007-5-6  柴の花   まんさく

青※ロベリアパリダ①  青い花①2009-5-6

青い花②2009-5-6  青い花③2009-5-6

青花④2009-5-8ラベンダー  赤い花 21 2009-5-8小薔薇2009-5-8

赤花 牡丹-深見草2009-5-8  赤花 牡丹 切取2009-5-9 +

赤花 椿⑩  白 鈴の花スノーフレーク

桃色花⑪2009-5-8八重櫻  白い花⑩2009-5-8マーガレット

白い花⑦5-7---白い花⑨2009-5-8  

白い花③ 5-7  白い花④2009-5-6

白紫花⑯2009-5-8---白花⑮ 林檎の花5-6

白花⑭ 林檎の花5-6---白花⑬ ななかまど2009-5-6

白い蕾⑫2009-5-8---白い綿毛の花⑱2009-5-6

白いはなぼたん2009-5-8●---白い花⑲鈴生りの花2009-5-6●

白い小花①●---白い花⑪2009-5-8躑躅j●

   
    



◎影石榴2009-5-8
満月や孤狼遠吠えなを昏(くら)し 【歩句】『満ざる月』1047










☆彡
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『笑九朗事件綴』陸

入口

仄かな灯火


『笑九朗事件綴』陸

入口の戸車がやや軋みながら横にひくと 花は蝋燭をかざした。そこは土を突き固められた土間が闇に向ってひろがっていたのである。天井も高く入口の光では見渡す事はできない。
「電灯はここまはきてねぇど」
はなが持っていた手燭の灯を 大きな柱に打たれた楔の上に備え付けられた器に刺し置くと闇に眼が慣れたせいなのか、蝋燭の焔が土蔵の一部を柔かに照らしては揺らめいた。人の陰影が微かに焔とともに命をおびているようにみえる。空気が淀んではいるものの冷気が肌をさす様に痛い。

蔵の闇


梅介は独りで壁伝いに数歩あゆみはじめ闇に暫し紛れこんだ。よほどこの蔵を知りつくしているのだろう。 やがて何かを重そうなものを引きずって私の元に現れると
「蝋燭の灯ば これに移せばもっと周りがみえるべさ」
とボソッと言った。

それは枝分かれして数本の蝋燭がささった不思議な蜀台であった。西洋の教会などで儀式などに使われている蜀台なのかもしれない、これは以前にどこかでみた記憶があった。かって横浜のとある教会を訪れた時に、祭壇に置かれてあった七つの蝋燭に枝分かれしたメノーラーと呼ばれたものに似ていたのである。
「なぜ こんな物が‥」笑九朗は呟かざるえなかった。
メノーラー①

蜀台の蝋燭に灯を遷すと土蔵の中は闇の世界から夕方のほの暗い光に包まれた。年輪を重ねた樹を使用した太い梁が随処に使われている。
「これは凄いなぁ、これだけの梁をつかうなんてザラにはありませんよ」
蜀台の蝋燭に灯を遷し、土蔵の中は闇の世界からややほの暗い光に包まれた。年輪を重ねた樹を使用した太い梁がいたる個所に使われている。周囲は壁から約1m幅程の床板がまるで縁側のように敷き詰められている。

笑九朗は半闇の中央奥を凝視した。
正面を見つめたまま口を押え、そこにあるものに驚愕した。
それはまさしく屋久杉にも似た大木が苫野中央に存在している、多くの瘤を蓄えた巨木が地面から一階高天井に伸びていたのである。天井はその木を包むように巧に隙間無く覆われているようだ。

「この樹はいきているのか‥」
辺りには根がしっかりと地面を掴んでいるように四方八方にのびている。

「大旦那さまはこの樹に耳をあてていたぞ」
「梅介くん、君はいつも旦那さんと一緒だったのかい?」
「んだ、この一階土間まではいつも一緒だ けんどここから動いちゃあいけねぇって言われていつもここでまってるんだ」
花も同じように首をコクリと縦にふった。

改めて眺めると巨木は上に伸び、樹を被うようにこの蔵は造られているのだ。

廊下状の床板には壁に向かっている大きな像が何体か置かれてある。それはまるで環状列石の中心に巨木を置き、守護している配置のようである。
2008-4--2008-5--2008-6

その像に近づこうとした時に 突然あの蜀台の枝の部分が動き始めたのだ。

蜀台が緩やかに回転しての蝋燭は勢いを増し、七つに分かれた枝の蝋燭がひとつの火焔となり竜神のように渦巻状になった。どうやら蜀台は熱を持つと回転するようになる機巧があるのだろう。
一気に土蔵の中は灯火の焔の光で明るくなったのである。

2008-7--2008-8--2008-9



闇にうかびがる2m以上の像が背を向け壁に何体も並んでいた。

地図 陸奥の地図501

そえ、ここは不來方の地  謎の闇の蔵‥
つづく










☆彡

※写真、ならびに人物・地名はすべて架空のもので本文とは関係ありません。写真はイメージを表現するもので多くは手前のものを使用しておりますが、もしご迷惑をおかけする場合は削除いたしますのでご連絡ください。







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【歩句】一夜綴 1040-1046

【歩句】一夜綴 1040-1046

【歩句】『ほつれ』1040-1041
春心ほつれ絡まる華甲なる
誘われし一夜櫻や身のほつれ

検索※本卦還り-還暦-華甲
「華」の字を分解すると六つの「十」と「一」とになり、「甲」は甲子(きのえね)で十干と十二支のそれぞれの最初を指すところから数え年61歳の称で還暦こととある。

【歩句】『くけ台』1042-1043
繕いて針穴射りて夜深ける
くけ台やぽつり佇む語らぬ灯

【歩句】『指抜き』1044-1045
のこされし指貫ひとつ春わすれ
春たたみ指貫ひとつ影おとす

【歩句】『裁縫い/からかさかやつり-シペラス』1046
灯したるシペラスの影ほつれ繕う

検索※からかさかやつり(シペラス)-かやつり草‐
蚊帳吊り草マダカスカル原産の雑草-パピルスの亜種-
涼をよぶ姿-6月

☆彡最後に
故九路の『碾臼』より一句
「碾臼や寒夜豆碾く母の音」
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「川とサイレン」

「川とサイレン」

 北上川という大きく黄色い川が北から南へとながれていて、街の中心で東からくる川と西からくる川が交じりあう町がございました、中心をながれる河の橋名は北上川、そこに架かる橋は夕顔瀬橋といいます。昔は、かなり上流に硫黄鑛山があり、いつも濁っていて岩肌も黄土色でした。

夕顔瀬橋は源氏物語の夕顔の君からとった訳でもないでしょうが、なかなか良い名前のアーチ橋ではあります。その橋から西側へ暫らく行きますと、もうひとつ川がありましてかなり長い太田橋が架かっておりました。川の名前は雫石川と云い、小岩井、繋温泉の先、橋場線と云っていた線路があり、その先に雫石という小さな町がありますが、それが由来でないでしょうか。昔は太田橋は沢田橋とかいっておったそうですが今は太田橋の上流に同名の橋があります。

昔、この川には堤防などなく、度々氾濫して自由に流れを変えていたそうです。約500mの橋は町一番長い橋で、台風とか雪融け時期に増水して流されたりして、仮橋をつくったて渡っていました。仮橋を見にいった記憶があります。古代に地名ある方八丁という都からの出先砦もこの川の氾濫で削られていると聞いていますが、都から遠く離れた辺鄙なところまでやってきたとおもえば大変でしたでしょうね。

普段の本流は狭く浅くみえるのですが砂利採取で所々抉られ、三角錐の逆で蟻地獄の状態になります。この窪みに一度嵌りますと砂利や砂が崩れてしまい疲れ果て、子供が這い上がれることはできなくなり 何人かが溺れてしまったという記憶があります。

普段は浅瀬で箱眼鏡と三叉ヤスをもって川カジカを採りにいきました。ヤスの先で川底の石をそっと持上げて突くのですが、その頃はカジカは沢山おりました。
太田側にマッチ工場があり、その箱マッチで枯れ枝を集め、火をおこし串に刺したカジカを遠火で炙って食べました。他にもじゃが芋を砂に埋めて黒く焦げた皮を剥きハフハフと舌が火傷するほど熱ついという思い出がありました。塩もかけずにそれほどではないものの 大人ぶって「うまい」と大声を挙げて食べましたね。
今食べたらどうだか解りませんが、仲間で食べたカジカや芋はそりゃあ愉しかったです。今は農薬やらどうとかでカジカは生息しているかは解りませんがもう一度突いてみたいものです。

その頃、橋の下には、ほったて小屋が幾棟かあり、今で言う差別用語でしょう『祝人(ほいど)の家』といわれてあまり近づきませんでした。
戦後、大陸からの引揚げ者が舞鶴に帰還した方々の名前などをラジヲで流していた時代であり家のない方もまだいたようです。母はよく米などを渡しておりましたが、去った後に子供心にもなにかしら辛いものだったと記憶しております。

 諸葛川の支流で安倍一族の柵下の堀跡から流れる小川がありました。天昌寺をぬけ、三ツ屋付近から染物屋の下を流れていた古川といってました。家からも近く毎日のように川遊びでザッコ採りをしましたね。田園の間を通り最後は機関区の先辺りで北上川へと注いでおりました。古川は鰌、鮒、鰻、田螺、ゲンゴロウ、ヤゴなど雑魚(ざっこ)などがたくさんとれました。

この辺りは新田町といい地名は三十軒といいますが今は中学校が出来ており、醤油屋や下駄屋がありさんさ踊り(当時は輪踊り)の太鼓屋などもありました。太鼓屋は今も二軒残っております。

機関区は汽車の修理工場で、当時は機関車を整備した後に回転装置があり、それみたさで出掛けましたね。又、傍には開かずの踏切があり係員が常駐して遮断機の上げ下げをしていました。
機関車の絵を線路のすぐ脇で描いていた記憶があり、係員はいつもニコニコ微笑んでいて場所を提供してもらいましたね。今なら考えられないほどの機関車との間は近距離だったと思います。

機関区では朝昼夕と大きな音のサイレンが尾を曳くように鳴ります。
昼時も自宅で食事をとっているひとが多く、夕方は蒼い工員服を着た屈強な男たちが煤だらけの顔をほころばせながら、白い息を弾ませ通用門からゾロゾロと家に向うのです。
朝は納豆売りが新聞の見出しを語りながら大きな声で売りにきましたし、夕方にはサイレンが鳴ると、やはり、自転車に箱をのせた豆腐屋の喇叭も負けずと鳴らします。この時間帯になると導かれるように母の待つ家に帰るのですが、父を待ち伏せては手を繋いだり、肩車をしてもらったりして帰るのです。

西にそびえる南昌山は夕陽が沈む前、空は茜色から橙色、山際は淡い青が群青色に変化する。とても綺麗な時間があります。右手に父のごつい掌、左手にはバケツに入った何匹かの泥鰌が水を跳ねるのです。
やがて闇が訪れる暫し前になると、隣り組の人が街灯についた紐を引いて燈を灯して歩くと、一日の終りがやってきます。窓硝子に家族の影がぼやけて映るそんな風景がうかびます。   

九六








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