九六の匣

さまざま詰めこんだ匣

九六式落語風『あるよ!』

九六式落語風『あるよ!』



毎度のおはこびをありがとうごさいます。

さて落語家というものは何が大事たってぇいいますとな

そりゃあ噺家ですから、口からでる計算された出任せ、つまり笑わせるコツといいますかツボをいかに巧みに騙(かた)るかってとこです。でもねぇ経験もねぇ、しらねぇ事はいくら落語家でも騙るにオチですなぁ。

まあ、そんなところを捏(こ)ねくり、かき混ぜて皆さんにいかにもぉ知ったかぶりの如く発表…いけねぇや学会じゃねぇや、ご披露するんでございます。

でもねぇ落語家にとって、もっと大事(でぃじ)なことがござます。あげれば錐がない、鉋がない、槌がねぇ…大工(でぃく)やってるみたいだね。どうも噺がすすまねぇ。

友達、仲間 大事ですよ。
師匠 もっと大事
お客さま 嗚呼 もっともっと大事!!
 うけた、うけましたか。煽ってどうするぅ。でもハイ次に進みます。

これらをさしおいても大事なのが~かみさんですなぁ。漢字でかくと女将さん。
おや意外な顔をしてらっしゃる。でもねぇホントなんですよ。

某噺家はカミさんの唄まで作ってご披露していますなぁ。
ほら、「よしこさ~ん♪」ってね。おー、解っていらっしゃる。旧い方ですねぇ。
愉快で、快活、明朗、穏かでぇ…ど~も結婚式のひととなりを話してるみたいだね。

「愛してるよ~♪」。知ってる方だけお笑いくださいなぁ。(※①)

あの女将さん、惜しいことをしましたなぁ。ぇっ まだご健在。あとで付届けをしておかないと大変~な事になります。これは大事の上の大事なことですよ。御綺麗でいらっしゃいます。ホローになってない。
あたしゃ~テレビでしかみたことがない、有名な匣いり女房でいらっしゃる。
もっとホローしないとぉ?


ひと様の事はようござぁんす。
あっしの女房ですがぁ。そりゃあ凄い方(?)でぇ、ひと様には決してお見せできない顔(つら)なんです。う・嘘じゃないんですよ、今度おみせします。
若い頃はそりゃあ とって食いたいくらいの可愛さで、食っときゃよかったなぁ。

幾年も暮らしてますとぉ、あんな方でも情が湧いてまいります、見慣れたというか…。

長屋でいいますと、お鶴、お花、お松、最後にお亀!するってぃと私はヒョットコ野郎ですなぁ。

「けえったよ、お亀」っと熊五郎が狭い長屋に戻ってきた。

「あら、旦那様ぁお帰りなさいませ」
「な・なんだよ、そのものい・いいようは」
「なに言ってのさぁ、たまには…こんな言葉もぉつかって…」
「おいおい、だれかぁ味噌の蓋をしめてくんなぁ」
「なんだこの野暮でノータクリンの阿呆亭主ぅ」
「そー、それでなくちゃあいけねぇや、そんで何か嬉しい事でもあったのかい?」
「あらら、そうそう、今日はいい肴の出物があってねぇ」

「そうかい、なんだなぁ たまにお頭付ってぇのが食べたいねぇ」
 「あるよ!」------(※②)
「じゃあ、三寸を…」
 「あるよ!」
「御造りを…」
 「あるよ!」
「焼き魚はぁ」
 「あるよ!」
「酢の物も」
 「あるよ!」
「澄まし汁なんてぇ」
 「あるよ!」

「…いいねぇ、なんでも…」
 「あるわよ~はい、お酒ぇ」
「おいおい、何の魚なんでぇ」
「イ・ワ・シ、鰯よ」
「な・なんでぇ、鰯ぃ、全部が鰯、お前が小遣い稼ぎに売ってるヤツだろう」
「残ったのよう、それも大量にぃ」
「ああっ、頭が痛てぇ、それが余って調理したぁ」

「まだあるわよ。竜田揚げ、スリ身の甘酢餡かけ、それからー」
「わかった、わかったよ。おめぇなんか魂胆あるだろう」
「フフッ…、わかるぅ」
「なんだよ気色の悪い」
「で・で・できちゃった」
「何ぃできたぁ」
「へへへっ、や…だぁ」
「や・やだぁ」
「なによ、ややこだよぉ」
「……や・や・ややこぉ」
「………」
「そりゃあ、めでてぇ 目出度いや。おいらも親父、父親ってぇことだな」

長年連れ添って子供ができねえと諦めかけていた矢先のこと
夫婦(めおと)揃ってその晩は歌舞狂乱、酒池肉林

突然に天下に照り輝く天照、巌谷の発光のごとく
はたまた、辺り一面、花咲き乱れては迦陵頻伽(かりょうびんが)が舞うがごとし
お亀さんの声は仏が如く妙音鳥にもにたり。

まあ難しいことを言えばなんとかなるもんですが。

十月十日が過ぎまして、産み月となります。
熊五郎はてぃと
娘がいいとか、でぃく(大工)の二代目を継がせたいから息子がいいと祈るは祈る。
でも最後は五体満足であれば関係ないと、願を掛け、お百度参りや滝修行
はたまた長屋の入口には鰯の頭とくれば完璧。

さてさて産声があがり、産婆がとりますなぁ
心配なのは熊五郎ですなぁ
大丈夫かぁと襖を開けるとぉ

奥からお亀が
「あんた~ぁ あ・る・よ」
「なにがぁ」



え~ 九六式落語風『あるよ』…の一席でございました。
お後がよろしいようで

夫婦と云うものは、これがあるからやめられない。




夫婦みち いるよでいない 背を併せ あれのこと あああれね



九六



あれれ、あれは
(※①)は、「いつもどうもすいやせん」のポーズ
(※②)は、木村拓哉主演『ヒーロー』にバーテンダー役で出演の田中要次が使う言葉。最近は『ストロベリーナイト』の「お譲ちゃん、吐くなよ」がいい。ちょっとしか出ないが存在感がたまらない。


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九六式落語風 『馬霊玉』

九六式落語風 『馬霊玉(ましょうぎょく)』



 えー世に好き物は多くいらっしゃいますわなぁ

清次郎なる骨董に滅法こだわりを持つ男がいましてな
ある時、呑み友達の助六に
「あしゃあ、このかた世の珍品を集めてきた」と蒐集の自慢噺をしております。
「清さんの事だから 相当値の張る珍しいモノや噺があるんだろうね」
「まあ聴いてくれよ助さん、この間、旧家の蔵にあったモノだが…」
「なんだよ、勿体ぶるなよ。そんでその蔵から何が…」
「待て待て、誰が聞いてるやもしれねぇ。もっと寄りなさい」
「……」
「うげぇ、そりゃあ凄い」
「まだ言ってねぇよ」
「そうか早合点だったね」

「…蔵の奥からぁ…珍しい石がでてきたんだよ」
「石ーぃ、石がそんなに凄いのかい」
「そうだなぁ、その大きさは手毬の如く、丸くて、しかし重い」
「そりゃぁこんなもんだろう」と両手を回す仕草。

「その輝きは七色の虹が浮き出ていてね」
「それは舶来物なのかねぇ」
「それがよく聴いてみるとぉ、元々カミさんの実家にあったらしい」
「その奥方は金持ちなんだねぇ」
「いやいや、新宿村の農家の出だよ」
「ほぉ新宿村といぁ街道沿いの…そいで地面からでも掘り当てた。そうだろう?」
「まぁ似ても異なる処、ある時にぃ働きものの馬が死んだそうだ」
「ほう、う・馬ぁねぇ」
「可愛がっていたんで、食う訳にもいかねぇと馬頭観音よろしく簡素な棺桶をつくって塚に埋めた」
「俺なら馬刺しで一杯でぇ、勿体ない」
「おいおい、恨まれるよう」

「七日、つまり初七日、初午の日ぃ」
「馬にも初七日ってのがあるのかい」
「娘のおみよ坊が花を手向けに塚にいった…」
「良く聞く名前だねぇ、もしかすると馬の名はアオかい」
「その通りだが話の腰をおっちゃあいけねぇよ」
「娘が塚の場所が光輝いているのでぇ、腰ぬけた」
「おーそれでぇ」

塚によってひと掻き、ふた掻き
するってぃと土中から出たのがこの玉(ギョク)だという。

お和尚に知らせると、これは俗に世にいわれる『馬霊玉』ではないかと大騒ぎ。
拝み讃えて仏壇に供え、毎日念仏など唱えた…。

がぁ、通りかかった高齢の山伏が
「これなる玉は奇妙奇天烈、怪異怪変 魔性の玉 伝々とばかりに言ったそうでぇ」
「するとなにかい、その玉はタタリでもあるのかい」
「その通り、災いがあり、呪いがあるとね」
「けっ、しんじねぇよ。その山伏が妖しいね」
「そうはいうものの、なにか起こったらいけねぇと」
「一度拝見したいねぇその石玉、たまげるほどかい」
「まぁ聴いちくれ、五色の布に包んでぇ桐の箱にいれ遠い縁者の蔵にしまいこんだぁ」
「ほう、やっと新宿から浅草にやってきた」

清次郎は なんとか譲って欲しいと頼んだが、子々孫々まで蔵表に出してはいけねぇと言われたが諦めきれない。一度だけなんとか拝ませて欲しいと懇願してやっとの事でみせてもらったが、なんとその石玉の美しさといったら、この世のものでない。七宝七光の虹が周りにのぼるってなもんだね。

なんとか手に入れたいと思案するが盗人はご法度、
そうか自分でつくりゃあいいのかと思いつきまして

早速、あの新宿村の農家に赴いて粘ること四十九日、馬に食わせた草とか飲み水、土までも調べ上げて帰りぎわ 目白の何がしで馬を買いまして意気揚々戻ります。

たまには助六が様子を見物に参りますが、馬と同じものを食べて試して研究熱心でございますなぁ。
やがて一年も過ぎて清次郎が助六を訪ねて参りまして、もうすぐできそうだ。後は馬が死んだら埋めるだけとのたまいます。

ところが、精も根もつかい果たした当の清次郎がポックリ逝っちまいましてねぇ。

助六も呆れるやら残念がるやら、惜しい呑み友達をなくしたと嘆く嘆く。
初七日になりまして、清次郎の墓前に訪れたところ
「なんだなぁ、清さんお馬は元気だよ、親はなくても仔馬はそだつ…
 おやぁ!ひかるものがあるよ
 おおー、小さいけれど、馬霊玉じゃなく人霊玉だ~。素晴らしい黄金色」

よくよくみると、
「うん!?  なんだぁ!ふたつもあるよ。ふたつぅ?黄金?」



馬霊玉の一席でございました。お後がよろしいようでぇ


  
ゆく春の いろ艶やかに 衣きて 酔いてみやるか ひとの襟足

うら若きおなごはえーですな   はしたないぞぇ


九六
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九六式落語風『与太郎の意気地/大江戸人情噺』

九六式落語風『与太郎の意気地/大江戸人情噺』



当節、落語に登場する人物…ってほどじゃありませんが、
こんな方(キャラクター)がいたら面白いと云われますのが、
与太郎さんでございます。

でぇ皆々様は与太郎ってのはある程度ご存じでしょうけど、
どうもどこか一本抜けてるというか、意気地がない方ですなぁ
だらしのない或いは気概のないフニャラカなひとを指しますんで。
でも、はっきり言って傍にいたら迷惑、戸惑いますなぁ。
今でいいますとチャラチャラしてますからチャラボンですかね。
それに何事にも熱くならず夢中にもならない、つまりのところ幸せなんですな

場所はどこでもいいんですがぁ、
取敢えずぅど真中は日本橋の外れ小網町、与太郎がヘラヘラ・アヘラヘラとやって参ります。
まあ決して身分格式は卑しからず、とある由緒ある店(タナ)のボンボン、つまり若旦那ですな。

銭には困らない。それに絡むのが銭に不自由な…ら・落語家…あらら、指さしちゃいけませんよ。
そうそう 貴方、そのしたたり顔で頷いた方、頷きかたが与太郎が得意とするかたちなんですなぁ。

まあお聴きなさいよ。
朝も早よから夜半まで、白塗り人形町置屋の芸者衆を引連れては大騒ぎ。
でも江戸気質の芸者衆てえと、ずばりとした啖呵をきる…ところなんですが、
金があるから寄ってくる訳でないんです。

♪どこぞの殿も鐘(金)に言わせるぅ刻の鳥、音(値)のはるひと夜も愛しけり♪
字あまり♪
即興でつくってみましたが、

つまり与太郎が愛しくてたまらない。ご当地のアイドルですな。
ひとを恨んだりせずに、なにをされても根にもたず 金払いは良い、我が世の春と能天気。

親の傘下、日焼けはせぬが せんなりの瓢箪 色はしろくて ぶら下がり 

「おい与太ぅ!与太ぅ」
「わちきの渾名を呼ぶそなたは、タレかいなぁ」
「おいおい、俺だよぅ、幼馴染の俺様だぁ」
「アララ、留さぁん、留吉さんでないかいなぁ」
そもそもこのふたり、長屋に住むところの留吉は大棚の泣き虫与太郎を昔から兄のように庇ってきたと思いねェ

「あら留さ~ん、お久ぁし…ワカシ?イナダ?ワラサ?鰤! そうよ鰤(ぶり)よ」
「鰤かいそろそろ味がおちらぁ、なんだなぁ、四六時中オメッチは元気だなぁ。」
「なによ、あたいは何時も元気ですよっ」
「いいなぁお前は、意気地なしは治ったのかい」

「どうしたのさぁ為吉さん、肩が地面におちてるよ」
与太郎が、拾う真似して耳に息を吹きかける。
「ぬあんだ、陰間(男色)じゃぁねえんだぞ、よしなって、擽(くすぐ)ってえよ」

ところが留吉、なにか事情があるらしく言葉の割にしょ気ている。
「留さあん、どうしたのさ、おかしいよ」
「なぁに、馴染みの女郎と朝までしっぽりと…はぁ~」
「紙風船でもあるまいし、萎んでるよ このひと」
きゅっと握ったが、嫌な顔もせず
「実はよぅお前、いや与太郎さんに頼みがあるんだ」

襟をかえして頼みごとぉ
「頼み事と言われちゃ聴きずてないわねぇ で何のこと」
「お・女ができてな。照れちゃうぜ」と小指をたてて
「あらら、いいんじゃない」
「吉原の手前の安女郎をさぁ…いや~照れちまうねぇどうも」
「なんだよぅ、そこまで言って止めちゃいやだよ」
「……身請けをしようと金算段、賭場に運をかけてみたんだ」

ここで噺が重くなったというか、永くなるなと
与太郎は芸者たちに中村座に先に行くようにかたる。
当然 太鼓持ちの輩も一緒で賑やかに去っていきますんです

二人きりになりまして、朝からやっております不動稲荷の茶屋にはいります。

「それは難儀ですね、惚れた弱みに起請文、二の腕刺青ぃ、なんて書いてるの?」
「これかい、お松命っなんでぇ。俺は文字が読めねぇが」
「う~ん…でも賭場はどうなったのさぁ」

「へじめはついてたんだ、これで手付も払えるなんてね」
「それでぇ」
「憑きの神様に見放されてぇ尻の毛まで抜かれ、下手をこくと海苔巻、太巻き、簀巻(すまき)になっちまう」
与太郎も合鎚をうって身をのりだす
「それから…最後の勝負と親方から預かった一両」
「丁?半? どっちよ」
「なんでぇそんな噺じゃぁねぇよ、白山稲荷の境内からとびおりたぁ」
「なんだぁ負けちまったのかい」
「いやいやぁ、あたったね、倍の二両になった」
「なぁん~だ、じゃぁ しょげることないじゃぁん」
「ただよ、人間というもの欲がでる。もすこしあれば新所帯の家具一式ぃ」
「またやったのかい丁半博打ぉ」
首を横にふりふり
「三十両もあれば、あいつを足抜けしてせずとも身請けができらぁ」
「なんだよ、風のふくままぁ、宵越の銭は…なんてことじぁなぃね」

「実はよぅ、くじ…」
「クジラ? 鯨がどうしたの 汐でもふいたかい」
「籤だよ、富籤ぃ」

噺はこうなんです。二両もってホットして帰路についた為吉が境内で売られている富籤に目がいった。当たれは百両、おれはついてるとばかりに一両を富札にかえ,すでに壱百両が当たった気分。最初はうかれていたが、やがて、止めりゃあよかったと足元トボトボときたところに与太郎に出逢ったとい訳なんですなぁ。

「みせてご覧よう、なになに…へ組の九千三百十四…」
「与太郎、どうだい当たるかなぁ」
「当たるも八卦、当たらぬも富籤。でもねぇ への九三一四とは屁の臭いよだよ」
「臭いよだってぇ、消えて無くなる屁のようだぁってかぁ」
「あたってくんなきぁ困るんだよ。厠にいっても屁しかでねぇ、運は残ってる」

「それでいつ籤のお披露目なのさ」
「もうすぐでぇ、今に大太鼓が刻を打つ、するっていと俺は金持ち」
「あらいいねぇ」
「そんでオイラ様子を伺いにいってくるんだが、お前も一緒に来てほしい」
「なんだぁ、そんなお願いかい」
「ひとりじゃとても心細くていけねぇ。なんとか…ひとつ」
「銭の無心かとおもいきゃあ、いいよいってあげる。あたいも一度いっみたかったのさあ」
「へへっわるいねぇ」
いくら幼馴染の為吉に、銭を貸してくれといわれても、おとっつあんに頼まれた支払いの懐の金子、頼まれても貸すことはできぁせん。こんどのこんどは本当に勘当されちまうに違いない。

留吉が与太郎と共に境内に踏み込むと、なんとひとひとひとが蟻のように群がっているんですなぁ。
強欲というか、銭に目がくらみ 人というものは難儀なものです。
与太郎にしてみれば銭の苦労はしたことがないからひょうひょうとしている。

あまりの混みように、留吉はまえにもまして自信を失して
「いやーいるところには いるもんだなぁ」
「地獄の亡者さまさまですね」
暫くしますと太鼓の音色がかわりましてな、
トントコ、トントコ…次に大きくドォーンとばかりに鳴り響く。
願う者あり踊りだすものありでお祭り騒ぎ。

さても口上が述べられると、急に静まって各人々が一点みつめぇてぇ札を握りしめぇ

杖の先に尖がった錐が籤箱の中へグサッとばかりに突き刺して
番号の書いた札を天高く…読み上げがはじまります。
どどどーとばかりに駆け寄って血走る眼(まなこ)。
『へ組のぉー♪』
   「へだってよう」
『九千とぉ♪』
   「おい、なんてった、九千だとよ」
   「ほんと」
『三百ぅ♪』
   「おれっち、もう駄目。息がとまる…」
   「ほら拾だして」
『拾ぅ♪…とぉ♪』
   「死んだ、もう死んだ。これまで同じだな」
   「嗚呼、への、くさい…」
『七番ぁーーーん♪』
   「へのくさいな! な・な・七番????!!!!」

辺りはどよめき、おろおろ泣くは叫ぶはの阿鼻叫喚のありさまぁ。

ふたりとも上気して熱くなったはいいけれど
留吉はへなへなと座り込むみ 口をあけたまま動けない、

「な・な・七番、なんだって四番じゃあねぇの」

「嗚呼ぁ為さん、元気だしなよ」
「………」
もう一言(いちごん)もない、どうせなら全部がはずれりゃ諦めもつくがぁ
最後のさいごのいたちっぺ

もうアイツと手をとり逃げるしかねぇ
そこまで追い込まれて与太郎の顔をみあげりゃ

「ねぇ、あたいもそうだったけど、世の中、捨てた神ありゃあ拾う神。その空籤をあたいに売っておくれでないか」
と上気かげんの清まし顔。
誰も見向きもしねぇ外れ札を売ってくれといわれりゃあ、そりゃあ驚くわな。

「…な・なんだって、一文にもならねぇ籤札を」
「おっと、ここに、おっとつあんに預かった…それは内緒だよ、三十両があるんだけど…」
「おいおい馬鹿なこといっちゃあいけねえよ、そんな銭ぃ」
「どうせ、おとっつぁんから いつかは追い出される身、為吉兄さんのためになるなら本望だよ」
「おいおい…何をとち狂って…なっ、おちつけ」言ってる本人が落着きがない。

与太郎、為吉の口に指あて
「転がり込むのはどうせ兄さんの処、賃料の前払いなら御の字」
「与太郎、いや与太郎様よー」
「さあこれを持ってお松さんを迎えいっておくれでないか」
涙の為吉、言葉を返すこともできない。

一度だした銭、買う買わないの一悶着。
最後はおれましたねぇ為吉っあん

まあ、いいことはやっておくもんですなぁ
どこかのお偉いさんじぁありませんが
「わくわくどきどき感動したっ」ってね

「わたしゃあ生まれて初めて興奮したよ、良い夢みさせてもらったからね。ほんと感動したわいな」

感動どころか、勘当されるやもしれぬ、初めての与太郎の意気地


という大江戸人情噺の一席でございました。




なげーや。
おもろくねぇ…かいちまったもん 仕方あんめい。筆がおれちまったよぉ

そぞろ歩きも 独りじゃいやよ みちゆきの 好いた惚れたは 柳かぜ

長屋の春はちこうござんす。

九六

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【九六式落語風】『まくら噺』

【九六式落語風】『まくら噺』


 おやおや、今日は客の入りが濃いですなぁ。
そうでしょうともあまりお客様が多いとですな 「く・苦しい」などと酸欠で窒息してしますんで、このくらいの入りがほどほどでございますなぁ。

どぅーしてもアッシの噺が聴きていと、限りなく少数気鋭のお客様方のみ、シラミじゃあねぇですよ、のみお運び頂きまして誠にもってぇ …ミイリが減るってもんです。

あららお帰りですか。違うの? 
そう厠ですか、そんならいいのですがぁ。
あたしの噺がはじまった途端、席をたたれますとぉ
あらら、そちらもですかぁ
アッシの方が帰りたくなってきましたょ。
前でも後ろでもいっといでぇ
きっちり出してくるんですよ。

エー簡単に引き下がっちゃこちらも専門家。
プロですよ、ちゃんと教育を受けて訓練じゃなく、たんなる法螺噺の修行したんですよ。

まあ落語というもは噺が一番、二番がなくても噺でございます。
電話は?…
さようです。三番。四・五なくて? 六でなし。文●堂菓子店の回し者ですか。

今日はやりやすいいうか、皆さんちゃんと予習してらっしゃる。
まあ三平師匠ならぁここで
「いつもどうもすいやせん」ってやるんでしょう。
手はグーで右手でコツンと…
なんで私が師匠の真似をしなくちゃいけねんでしょうか。

あっ  お帰りなさい。
短い厠タイムでしたなぁ。お疲れさん…
違う?そう…、
席に座って頂いて本題にかからして頂きます。
あちきも生活が懸っておりますわいなぁ。


いまのが落語のマクラでござますなぁ。
これが噺をギュッと掴みまして…
このマクラが噺がいえりぁ、いちにんめぃなんでございます。

勉強になった?
そりゃあよかったねぇ
うちにけぇって自慢ができるねぇ………


えっ!
なにぃぃ、次の噺家がもうついたの。あの五月蠅いぃ
だからひっこめってぇいうのかい
なんだよ、さっきは遅れているから餅のようにのばしてぇながくって…
言い訳するなってか
わたしゃあ怒ってるんだよ

ああ、判った わかったよぅ。俺も江戸っこでぇ 生まれは田舎ぁだども
そこはキチッとケジメをつけて。

おいカカアここにきて坐れ、まあ素直に座りなさいよ。
よいしょっと頭をっ これでひざマクラってぇのはどうでげしょ。
誰だ!
そこで惜しいと言ったのは、お客様でもゆるしませんよ、とらきたもんだ。

でもね、
ここで皆さんと喧嘩になったら
わたしゃ お先マックラ~


えーまくら噺の一席でございました。

三味も太鼓もいらんよ。坐布団は自分で持ってくよ。

ささっと 吉原でもくりだそうかい ねぇ~
川の夜風に舟下り愛しおまえと千代の紙など帆掛け船ぇ♪

そしたらねぇ 艶っぽい枕噺でもきかせてあげますよぅ




九六


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【九六式落語風】『又酒飲んだ?』

【九六式落語風】『又酒飲んだ?』


え~お早いおはこびを
お馴染みの酒好きの八五郎と大家のお噺を~

どこにも酒好きという輩がいるもんでぇして、暇さえあれば昼盛りから、クダなど巻いて呑んだくれでいる奴を巷でよく見かけるもんですなぁ。わたしなんか避けてとおるんですが、よけた方へと千鳥足。カカア質に入れても酔っ払っている御仁は、そうやたらいるもんでないんですがねぇ。

まぁいつもの長屋におりますところの八五郎はといいますと、縄暖簾片手に飲み屋の女に声を掛けられるともうたまりません、肩で縄をくぐるやいなや、グィとばかりに2~3杯ひっかける。これが又たまらねぇとまらない。弱い性格というか、でれしねぇというか女房泣かせの困ったやつでして、でも…ヒトはいいんですよ。呑まねぇときはですよ。

つい先日も「でていけぇ、このトンチキ女ぁ」なんてことで危なく女房から三くだり半ってな事になりあんして、奥方、それほどのもんじゃありませんがプイとでていっちまった。
大家といえば親も同然、みかねて間にはいって なんとかぁ収めたんですがこれが拗ましてな、このままじぁいけねぇと奥方と算段しましてな 一度懲らしめに灸をすえてやろうとなりましてぇ、
「ハチ!こままだと怖いモノにあうよ、お化けとか幽霊といった類じゃあないよ、本当に怖いのは生霊というか人間さまだよ、特に口裂け女ってのがいけませんなぁ」
「てやんでぇ大家さん、あっしゃーこのかた怖いモノなんざぁみたことねぇ」
「八五郎や、いつ何刻出会うかもしれないよ」
「でてからオドロク 酒はドブロクぅ ロクロックビぃ」
「まぁ、とにかくだなぁオカミさん迎えにいっておいで、酒は呑んじゃあいけねぇよ」
てなことでシオシオ出かけていきましてな

暫くして真っ青になった八五郎が股引おとして帰ってまいりました。
「どうしたい、顔が真っ青だよ」
「…どうもこうも、あいつを迎えにいったんです」
「それで女房はみつかったのかい」
「へぇ、途中でみかけて後をおっていったんでぇ」
「そうかい、じゃあ謝ったたんだね」
「それがぁ…、後ろを歩いていると、あの野郎おかしな小屋に入ったです」
「小屋ってぇと芝居小屋かい」
「なんか胡散臭い、あれですよ」
「あれって浅草橋の見世物小屋のことかい」
「そ・そうなんでぇ、俺の知らぬ間に誰かと逢引なんて勘ぐったんですが」
「なんだよ、お前のカミさん、たしかに器量は悪いし顔はもっと悪いよ」
「な・なんもそこまでいわなくても 大家さん」
「するわけねぇし、されるワケがないよ、お前の稼ぎが悪いから小屋で手間仕事してたんだろうよ」
「はぁ、そんで酒でもちょいとヒッカケ、どやしてやろうと…」
「また酒かい」
「いやいや、そう思ったけど、いつまで経っても出てこねぇ。
そのうち小男が番台にでて、これは口上をいうんだよ。
それがまた上手で、怖いものみたさもあって」
「おやおや、すると何かい、小屋の番台の上で-さぁ寄ってらしゃい、観てらっしゃい-って言われて入ったのかい。八っぁん。」
「大家さん、そうなんですよ。あっしゃーね、呼ばれるとぎゅっとなるほど弱いんでぇ」
「それで呼ばれてどうなったい」
「へぇ、それでね、小屋の中にへえったんです。そりゃあ薄暗いったらありゃあしねぇ」
「真っ暗なんだね」
「大家さんきいてくんなさい。暫くするとボーと蝋燭が灯ったとおもいねぇ」
「おやおや、お化けでもでたかい」
「ヘヘン、こっちゃあ浅草産まれでぇ、矢でも河豚鉄砲でもきゃがれーっと、かまえたらぁ」
「構えてどうした」
「大きな戸板にぃ…」
「ははぁ知ってるよ、血がべっとりと…だろう?」
「大家さん、あせっちゃいけねぇよ」
「違うってのかい、おおいたち」
「そんなもん驚くかぁてなもんだ、戸板の上にねぇ。に・に・女房がぉ笑った顔で大口をあけてぇ…」
「おおこわ、勘弁しておくれよ。そりゃあ口裂け女だよ」
「ち・ち・ちがうんですょょょ。
本当に怖いのなんのって ま・ま・また裂け女なんですよぅ」

「なんだって、 またサケのんだぁ?」

おあとがよろしいようで、


座布団、とっておしまい!

太鼓っ、笛~っ お囃子~っ
三味線はいいよ ひいたから

九六
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【九六式落語風】『三途午』

【九六式落語風】『三途午』


えー落語ってものは聴いた噺を大袈裟にかたるもんでしてな、
怖いと思えば本当に怖くなるし恐ろしくもなるんですなぁ。

われわれ業界では、饅頭という噺が有名ですがぁ、
まぁ知らない方は、これからずっーとこちらに寄席(よせ)て…頂いて…、
  笑いどころなんですよ。

そのぅなんですなぁ、幽霊てのはご存じですよね。
えっ食ったことがないから判らねぇですか。
困った御仁ですなぁ。まぁひとをくったぁ噺ではございます。
ハイ笑ってぇ。

早いはなしがぁ、早くもねぇんですがネェ
ひとが亡くなってぇですな、未練がましく逢いたやもう一度とかぁ、
恨んでおりますぅっていと、出てまいります。

月に一度じゃござんせんよ。
前の方、そちらさんはおわったんですか。
ご愁傷様、ナンマンダブ、はんにゃはらみた、ついでに南無阿弥陀仏ぅ…あ~めん
本当に不粋な噺家でしてぇ。

カミさんのお糸が突然の病でポックリと逝ってしまった与乃助は
独りしんみり手酌酒、そんなところに薄戸を叩く音が
トン、トン
「すいません、戻ってまいりました。生前はお世話になりましてぇ」
「なんでぃ、誰かと思えばお糸じゃあねえか。
 入れ入れ遠慮はいらねぇ。でぇどうしたんだ?」
「お前さんに逢いたくて、やもたてもたまらず 訪ねて参りました」
「それにしても随分と遅せいじゃぁないか」
「はい、なにぶん夜路なもので、迷いましてねぇ」
「そうかい、まぁ立ち話もなんだ、ゆっくりしてけるんだろぅ」
「慣れたる家でも閾(しきい)がたかくて…」
「カシコばるんじぁねぇよ、膝を崩してくんなぁ」
「有難いことで、わたしゃあ追い出されるかと気がかりでねぇ」
「何をほざいてるんだ、長年寄り添った仲じゃあねぇか」
「嬉しいねぇ」
「それで、何か用があるのかい」
「…実は」
「なんだなんだ新婚初夜じゃあるめいし 気兼ね無しで言ってくれよ」
「そこまで言ってもらえるなら甘えさせてもらうよ」
「なんだろね、崩した素足がみえねぇよ、足がないのは本当なんだ」

「そのぉ お前さんの仕立てた白装束で三途の河原まで参りました」
「そりぁご苦労なこった」
「そこで爺婆のふたりに呼止められたんですよ」
「ほうほう、和尚に聴いたことがある。確か懸衣翁と奪衣婆とかいったような」
「そうなんですよ。着物は全部奪われ、河船頭の前に参ったら」
「なんか悪さでもされたのか」
「ニターっと笑って」
「それでぇ」
「銭を出せ、渡り賃をよこせと言うんですよ」
「なんと卑しい奴だなぁ」
「だから首から下げた袋から銭を出そうとしたら、あんたぁ それが無いのよ」
「エーッ ぜ・銭がないとどうなるんだ」
「あのふたり、私に戻って持ってこい、じゃなければ舟には乗せないって仁王立ち」
「す・すまねぇ お糸 許してくれー」
「なにかい、最初から持たせなかったのかい」
「悪気はなかったぞ。そのー酒がよ、どうしても淋しくてよぅ」
「そうかい、わたしゃあ幽霊だけど、金も酒に化けちまったかい」
「勘弁しちくれー。朝になったらよ、大家に掛合って借りてくるからよ」
「あんたぁ、それじゃあ遅いんだよ、みて御覧よ 付け馬みたいにさぁ」
「なんだい、あいつらも一緒かい」
「あんたも一緒に三途まで来ておくれよ、私ひとりじゃあ心細いからさぁ」
「そ・そんな阿漕なぁ」
「後生だよ」
「あのふたりを説得してみようか」
「うん」
「おーい、外の方々ぁ」
「おふたりさん、ちょいとぉ…」
「……」「……」
「ところで船賃は幾らだい。6文?モノは相談だが朝まで待ってくれたら倍、いや三倍はらいます」
「……」「……」
「返事がないねぇあんた」
「よし、じゃあ覚悟を決めた。よしゃあ、一年待ってくれたら一両、一両でどうだい」
「…」「…」
「わかったよ。俺も男だ、清水寺から飛び降りよう、十年待ってくれたら十両」
「・」「・」
「けっ、商売人だなぁ。最後だよ、いいかい、死ぬまで待ってくれたら百両でどうだ」
「……い」「……よしのった」
「さすがだね、三途の河を仕切ってるだけあるね」
「あんたぁ、死ぬまでって私もかい」
「こいつとふたりで二百両、いいね」

「うーん、良しとするか、なぁお婆」
「与乃助とお糸はおいておくじゃ、のう爺さま」

「よかったねぇ、あんたぁ」
「三途のおふたりさん、じゃあいいね。俺っち夫婦は律儀なんだ。
 金は死んだ時、持っていくからね。じゃあ ありがとうよ」



「なんかいっちまったよ。また来たらどうするの」
「決まってらい、また値上げして化けるんだよ」

え~三途午という一席でございました。
おあとがよろしいようで。

太鼓、笛~っ お囃子ぃ

九六


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『塩屋』

珍屋-めずらしや-シリーズ

『塩屋』

「へぇー 新しい店ができたんだね」
「ごめんよっ」
「いらっしゃいませっときたもんだぁ」
「ほうーっ、しおや、塩屋ってえと あのショッパイ塩の事ですかね」
「左様でございますてっな うんうん、妙に しおらしいモノ言い、違うって塩らしいじゃあなく、塩なんだって」
「…」
「わかったよ、塩だろう、塩」
「試に舐めてみろって言うのかい…」

「おーショッパイよ、確に塩だねぇ塩だよ まっちげいねえよ」
「こっちも試してみろってのかい、おっと違うねえ、味がぐっと引き締まってるね」

「なんだねぇこうゆうのを塩と梅とかいてぇ、あんばい(塩梅)とゆうんだぁ、何、知ってるてえ  お前さんもガク(学)があるねぇ。」
「花があるよねぇ がく(ガク)の上にゃ花があるもんだ」

「なんだよねぇ、言っておくけどさぁ、塩梅は按排とか按配とも書くんだよ」
「いけねぇ 学のあるとこをひけらかしちゃったよう」
「まあ、寺の和尚の講釈だけどね 何回も言われて覚えちまったよぅ」

「これが海シオ、こっちが山シオ、で これが胡麻シオ頭の親父だぁね」
「おや笑っちゃってるね あちきは、将来は落語家(はなしか)になろうかなぁと…」
「ところでぇオイラは大家から頼まれものがあったんだい」
「えーと」
「お前さん知ってるかい」
「…」
「知らにぁと きたもんだ うんーと」
「きたよ、きたぁ」
「大家がゆうことにゃあ、お前はもの覚えが悪いから コジツケにしておくからって…」
「そうだよ、オイラの名字だからってな」
「オイラの名字は佐藤だよなぁ」
「佐藤、さとう、サトウ、砂糖、砂糖だよ」
「頼まれもんは砂糖たぁ 地獄の閻魔さまでも気がつくめぇ」
「だから砂糖を売っちくれ」

「なに?和三盆ならあるって」
「お・オイラの買いたいのは砂糖で、ワーサンの三本じゃねえよ」
「そうかぁ ねぇならしょうがねぇ、他をあたろうかい」
「えっ、なにかい、買わねえならとっととかえれってかい」
「おっと 雪のように掛けられちまったい 相撲取りじゃあるまいしぃ」

「本当に 塩を撒かれてしまうなんざぁ さすが塩屋だねぇ」


おあとがよろしいようでぇ…。
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【九六式落語風】『うちの宿六』

【九六式落語風】『うちの宿六』

えー、夫婦は似たもの同志と申しますが、

女は夜半に目覚めた。
「エッ…いやだぁ」
っと語ると、ヒョロりと顔をあげて、自分の体を探しはじめた。
「あら やだよぉ わたしゃあ なんて寝相が悪いでございあんしょうね」
っと言いつつ
女は体が、夫の隣の布団に寝ているのを、納得したんですなぁ
布団から蛇のように、だらしなく伸びた自分の首をシュルルと縮めて、元の通りにした。

「あぁあ、ちょっと気が緩むと すぐ伸びて 大変な事になああぁるぅぅ
 亭主にみられなくて よかったわ ふぁ…眠いわょ…」

横にいびきをかいて寝込んでいる宿六をみながら
「なんだよぅ、うちの亭主は自分の女房が ろくろっ首だって事
 気付いてないんだわいなぁ」
まぁっ、女房族は亭主に知られちゃいけねぇものを、二・三は持っててるもんでしてなぁ

女房がウトウトし始めると、隣で寝ていた夫がガサゴソと起きてましてな
厠に行ったらしく、暫くして帰ってきた。

うろうろして 床を探しながらポツリと言った。
「アリリャあ 又、眼鼻口を落としてしまったぜ」

それを聞いた女房は布団から顔出して薄暗いなかで夫の顔をみた。
「なによ、あんたぁ のっぺら坊だったのぉ」
「わりい わりい ごめんなさいよ それにしても お前は余り驚かないねぇ」
「あたしかい なぁに似たようなもんだからね」
っと言ったまま 首を掻きながら 寝てしまった とさ。


おあとがよろしいようで



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九六

Author:九六
好きなものを自由に書く、読む、観る、描く。そして遊び愉しむ。
【※】【玖絽・by96・九六・九路・KURO・物部黒彦】【96猫國から発信】
【※】-半世紀分の散らばした気侭綴ゑ-

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