九六の匣

さまざま詰めこんだ匣

『竹とんぼ』

『竹とんぼ』

「さあお立会!!!」
彼は大声で商店街の目抜き通り、 林檎の箱の上で叫び始めた。
「ここに取り出だした竹のプロペラを特と見てごらん」
何か知らないが子供たちが眼の色を変えている。
マントを着た二十代位、二枚目な韓流系男は得意満面に商品の説明を続けた。

「ほら良く見てね、これにプロベラを接着する‥」
-なんだゴム動力の飛行機じゃないか、それとも竹トンボ-っと内心まだこんな露天商売が成り立っているのかと呆れる反面、懐かしくもある。きっと商店街のイベントかなにかだろうが、子供たちは更に眼を皿のようにしてくいついている。

-おいおい、新手の悪徳商売じゃあないのか、催眠商法、詐欺まがいの商売をこんな子供にも魔の手を伸ばしているんだなぁ-

この遣り取りを聞きながら
昔、ゴム飛行機が流行った事があった事を想い出した。
構造は単純だが微妙なテクが求められた。例えば竹籤(たけひご)を火で炙ってカーブをつける事や、竹を接ぎ管でつなぎ、その間に入れる薄い木板を組み入れて翼が出来上がる。後は竹に米糊塗り障子紙かもっと薄い紙で覆い貼り付ける。紙は鋏で枠より大き目に切り取り裏側に糊でとめる。

次は本体、割箸二本分の軽く断面が四角い棒を、駄菓子屋か教材の文具店で購入し使用する。棒板は直線で節ののないものを選ばねばならないのである。細い錐で孔を開けて、頭の部分を荷札の針金でとめ、他にはプロペラのビーズ、長いゴム、針金をつけた車輪、後輪は竹を曲げて代用した。大事な事はバランスであり、頭の部分のオモリと可動式の翼を調節しなければならないのだ。

九六ゑ ゴム飛行機

 それでも大空を飛ばして4-5回で壊れてしまうから報われないといえばそれまでだけど競いながら必死で製作したのである。
出来上がったゴム飛行機は指でプロペラを回し、ゴムの逆反動が動力となるのだら、かなり回さねばならない。後にゴムを回す小さな発条の機械(?)が出たがなかなか手に入らない代物だつたと記憶している。

さて、子供時代のそんな場面を想い出しながら、先ほどの若い露天商が語るプロペラを拝聴していたが どこかプロペラの説明が違うようだ。
竹トンボの下に何やら丸い吸盤見たい部品を取付けているのだ。
「えっどうして」

子供たちは大騒ぎで順番を待ちきれずに、露天商の男に群がりお金を頭上高く翳して振っているのだ。
手にしたお金をみて又驚いたのだ。
なんと一万円札の束なのだ。

「子供たち、やめなさい」
思わず怒鳴ってしまった。
すると、子供たち全員が私の方を振返り黙ったまま睨んでいる。
ひとりの子供が、私の前にやって来ると
「おじさん、ここは子供の競り市なんだ」
「だって、あんな物を君たちが騙されて買うなんて大人のひとりとして黙っている訳にはいかないんだ」
すると両足を交互に踏鳴らし私を罵り始めたではないか。
「おじさん、黙って見ているなら許可するけど口出しをしないでくれよ」
周りも
「そうだ、そうだ」
「邪魔するな」
「帰れよ」等々
たじろぎながら後退りをして反対側の舗道で見守る事にした。

マント露天商の男が指を指して
「君に決定だぁ 金額は弐百三十五万で落札です」
指名された少年はすぐさま壇上に駆け上がると
「こんな名誉な事はない」と大きな声で叫びながら札束を渡しているのです。
そして先ほどの竹とんぼみたいな物を頭に乗せると、プロペラが頭上で回転し始めた。
次の瞬間、彼は空高く舞い上がっていった。

「な・なんだぁアレは。ほ・本物なのか」っと僕はその場にうずくまり、飛び去り豆粒になっていく空を見上げていた。
-あれは知っているぞ、なんていったけ  ほらあれだよ -

暫くすると、先ほどの露天商が近づいてきて僕の前でこう囁いた。
「君も参加したくなったかい」
男はマントを剥ぐと青いスーツを着ていた。二枚目のいい男であるが、髭が鼻の下に横向きに針金のように数本伸びている。それに首にはネクタイならぬ鈴がぶら下っている。
「今度はこのお腹のポケットから不思議なものが出てくるんだよ」
それから、男は自分が未来から来たロボットだと名乗った‥。

「‥‥き・君は本当に未来から来たロボットだというのかい、嘘をつくなよ」
すると男は髪の毛の中からふたつの猫耳をピンとさせて胸を張って、
「そう、猫型改なのさ」
「ね・ねこ・猫型?」
「君も子供になればいいんだよ、お金は少しはあるんだろうから!」

思わず頷くと、彼はやにわに懐中電灯のようなものをとり出すと、私に向けて光らせたのである。
「さあこれで大丈夫!君は子供になったよ。そうさ夢は叶えるものなのさぁ」
っと言い残すと壇上に向かってスタスタと歩いていった。

彼の腰の大きなポケットには、何か大きな扉のような先が飛び出していた。
「あれは‥どこでもド‥‥」
僕の体と足は勝手に動きはじめていた。



FFの世界風 第参話 『竹とんぼ』 了   九六

台湾から‥土産  駱駝博物誌より
プラスチック竹コプ①--プラスチック竹コプ②






このページのトップへ

『バタバタ』

『バタバタ』

「あれっ?」
「あれは何かしら」
「ねぇ、あれ見てみて、何かひっかかってバタバタしてるわ」
二階で、洗濯物を干していた妻は私を呼んだ土曜日の昼ちかく。
「なんかあったの?」

「公園の大きな木の上、枝になんか白いものがひっかかってのよ」
妻の指先をみるとバタバタともがいているものがある。
「なんだろね?洗濯物のシーツじゃないよね、
白鳥みたいだね、りつ子さん」
「はて?あんな大きな鳥はいないわよ」
「あんな木の上だと近くでも、根元からはみえないなぁ、
でも犬がうるさく吠えてるよ」
「絶対!洗濯物じゃあないわ、生き物よ」
「うーん、望遠鏡があるかな」
引き出しの奥からオペラ用の折たたみの双眼鏡をとりだした。
「なんかワクワクするわ」
「り・りつ子、ほら見てごらん」
「なんなの?あっ!口がタラコ、大きな目、黒い足」
「だいじな事を忘れてないか」
「頭に毛が三本、解ったわ!フフッ」
「○ちゃんだね」
「風に飛ばされて枝に絡まるなんてドジな奴は…」
「彼しかいないわ」
「助けに行こうぜ」
「…物干竿が必要よね 正ちゃん」
「おBA○♪」



FFの世界風 第弐話 『バタバタ』 了   九六
このページのトップへ

『カミングアウト』

『カミングアウト』  

「先輩!カミングアウトして 僕らの世界へ来て下さいよ」

山本は紅潮させた顔のまま カウンターのとまり木の横で、
私の横顔にアルコールの含んだ息でまくしたてる。
「もともと こっちの世界の人なんですからぁ 一緒に唄いましょうよぅ」

つまり、カラオケでアニソン(アニメソング)を唄いあい 盛り上がろうという訳だ。
とにかく 一緒に懐かしがろうというのだ。
後輩の山本はとにかく この手の歌には滅法つよく どこで仕入れるのか 
皆が知らないメロディをソラで唄いはじめるのだ。

「君には敵わないよぅ エッ 又唄うのかい」
最近のカラオケは 種々多様化しているらしく 
オタク専用の聞いた事も見た事もないテーマ曲を集めたものがあるらしいのだ。
私が知らないだけで 合唱についていくのが精一杯なのだ。
確かに歳はそれほど離れていないにしても ここまでくると酔いがまわってくるのだ。
それに 背広の下に着込んでいる服が汗まみれでゴワゴワしてきた。

相槌をうつように 頷きながら、何故こいつは、こんなにも力強く唄い喋りまくるんだろう。
本当に元気な奴なんだと 思いつつ、
そろそろ演歌も聴きたいし 私の世代のポップスも歌いたい。
けど 別の意味で、私は内心ほくそ笑んだ。スコットランドの酒がからい。
もっと 薄い水割りにして欲しいものだ そう思いながら 
このままじゃ酔っ払いになっちまうと 思いはじめていた。

「だけど もう とっくに カミングアウトはしてるんだし もしかすると今夜も‥」
っと心に呟く。

この背広の中には○ーマークのタイツが 蒸れて暑く 汗だくである。
やはり 着込んでくるんじゃあなかったと反省をした。

正義の仕事は、今風の揉め事ばかりで、かなりストレスがたまってしまう。
昔、中年スーパーマンという漫画をみたような気もするし、
最近は映画のゼブラーマンも観たが、本当の事を言えば 
俺たち正義の味方の○ーマンだって疲れるんだ。
そうさぁ  君達は飲んでいたらいいさあ。
ほら、胸のバッチに 誰かが今夜も正義の味方○ーマンを、呼びつけているのだ。
立ち上がりながら 鞄の中の○ーマンのマスクを確認しながら
「じゃ 悪いけど お先するよ」
ぶうぶう 言う山本等 後輩達の罵りの声を聴きながら スナックの扉をあける。
夏の暑い空気が一気にタイツの中まで入り込んでくるのだ。

まあ、未練が残るが 、薄暗い路地裏に入り マントを首にゆわえて
マスクを被り、宙に翔びあがった。

さて 今夜の事件はなんなのだろうか‥。




FFの世界風 第壱話 『カミングアウト』 了   九六



このページのトップへ

FC2Ad

プロフィール

九六

Author:九六
好きなものを自由に書く、読む、観る、描く。そして遊び愉しむ。
【※】【玖絽・by96・九六・九路・KURO・物部黒彦】【96猫國から発信】
【※】-半世紀分の散らばした気侭綴ゑ-

最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

FC2カウンター


リンク

このブログをリンクに追加する

全タイトルを表示

全タイトルを表示

ブログ内検索

月別アーカイブ

ポインタ・スイッチ





ボタン

最近のトラックバック